社会実装

2大センターを学内外に整備。
巨大産学官民連携チームが創出する、波及効果の高い新事業を紹介
-オープンイノベーション2.0の先駆的事例


健康研究機能を集約「健康未来イノベーションセンター」

 弘前大学は文部科学省の「地域科学技術実証拠点整備事業」全国22拠点の一つに採択されました。本事業は文部科学省が地方創生を目的に、産学官が連携する施設整備などを支援するものです。
 この採択を受け、本学は健康研究機能を集約した全学組織として「健康未来イノベーションセンター」(センター長 柏倉幾郎副学長、副センター長 若林孝一大学院医学研究科長・医学部長)を創設しました。平成30年には同センター名を冠した拠点施設を医学部キャンパス内に新設し、県や市、企業などCOI参画機関が一堂に会して新ビジネス創出をめざすオープンイノベーション創造の場が誕生します。同センターは健診と啓発を即日で行う「啓発型(新型)健診」の開発・実証や、住民参加型の健康づくり施設としても機能します。最終的には、弘前大学発の地方創生に向けた青森県全体の雇用創出や新産業創出に寄与します。




社会実装の中核を担う「健やか力推進センター」

 社会実装=事業化を前提に、産学官連携で取り組むこともCOIのテーマです。弘前大学COIに参画する企業数は初年度5社でしたが、今や研究機関も合わせると約50機関に達します。企業間や大学間などの連携も多方面で構築され、産学官に加えて「民」も積極的に巻き込み、オープンイノベーション2.0を実現しながら、社会実装化を強力に推し進めているのです。
 その中心となるのが青森県医師会附属「健やか力推進センター」(センター長 中路重之特任教授)。人材育成支援に力を注ぎ、青森県の健康経営認定制度の支援や、地域・職域の健康づくりリーダー研修、青森県内小中学校の健康授業、親子体操の普及員養成講座など、子どもから大人まで巻き込んだ健康啓発を全県で展開しています。




本拠点が最終的に目指す、アプリケーション —参画企業の社会実装戦略テーマ

● 予兆発見アルゴリズムの開発 [GEヘルスケア・ジャパン]
● 健診センター・医療機関連携システムの開発 [マルマンコンピュータサービス]
予兆発見のアプリケーション開発 [マルマンコンピュータサービス]
● 脳疾患におけるオミックス解析技術を利用した解析ツールの開発 [東北化学薬品]
健康度検査システム,健康改善製品の開発 [テクノスルガ・ラボ]
● 診療施設向け健康情報共有システムの開発 [東日本電信電話]
「運動の習慣化」スキームの開発 [イオンリテール]
個人の健康維持および疾患予防に最適な食事提供サービス [花王][栄研]
● 疾病の予防に有効な食素材やその成分,食習慣に基づく予防法の提供 [カゴメ]
● アンチエイジングサービスの開発 [カゴメ+調整中]
内臓脂肪に着目した健康支援サービス [花王]
● 高齢者における健康情報データと嗅覚の関係性の解明 [エーザイ]
● 新たな健康指標の開発と製品・サービスの提供 [協和発酵バイオ]
口腔ケア及び睡眠ケア研究とBD解析の融合による認知症・生活習慣病の予防法開発と社会実装 [ライオン]
● 生活習慣病予防及び健康教育・啓発に活用できる生活活動記録機器の普及 [オムロンヘルスケア]
予兆因子に基づいた健康教育プログラム開発 [ベネッセコーポレーション]
生活習慣病評価系ならびに常在細菌メタゲノム解析系の構築 [北海道システム・サイエンス]
● 生活習慣病の予防法の確立 [生命科学インスティテュート]
● 新たな健康指標の確立と健康評価法の開発 [ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ]
● 健康維持と疾患予防に向けた「食生活の改善」と「運動の場づくり」 [日本コープ共済]
● 意思決定サポートセンターの設置 [ベネッセスタイルケア]
● 高齢者の見守り・防犯システムの開発 [住友電気工業]
● 活動評価システムの開発 [住友電気工業]
● 財産管理支援システムの開発 [三井住友信託銀行]




1.健診+結果判定+啓発を即日完了。
「啓発型(新型)健診」開発と国内外で標準化 ―国内、アジア、世界に波及へ

 従来型の健診の弱点として、受診者自身のヘルスリテラシーを十分に向上させることができず、その結果、健診後の行動変容につながりにくいことが指摘されています。そこで弘前大学COIは、健診後の行動変容を目的に、健診と結果判定、啓発を即日で行う「啓発型(新型)健診」のトライアル版を実施しました。
 健診には青森県内企業の従業員80名が参加し、COIスタッフやCOI参画機関が連携し、約2時間で健診と啓発を完了する仕組みを構築することができました。健診項目は、岩木健康推進プロジェクトで得た知見からメタボ、歯科、ロコモ、認知をメインに、血液検査や体力測定など、最小限の項目で全身の健康チェックを実施しました。検査後、結果に対応して開発した健康教育教材を使用して、会場内で医師や専門家が健康教育・啓発を行いました。
 健診後、フォロー啓発として、受診者に対して健康情報新聞を2週間に一度半年間にわたって配信。6カ月後の再健診では、数値や行動変容について検証を行い、本健診の普及版の開発・実証につなげます。さらに国内外のヘルスケアビジネスの標準化を達成し、最終的には超高齢化に直面する国内、さらにはアジアを中心に海外に波及させ、本学発のビジネスモデルとして確立させます。




2.小中学校も一体となって
「健康教育」プログラムを展開 ―子供を介し、保護者をまきこむ

 将来的な視点で健康意識を根付かせることを目的に、青森県内の小中学校に本学教員が出向いて、健康教育に関するプログラムを開発し、健康に関する授業を学校教員とともに積極的に実施しています。
 黒石市立中郷小学校の6年生約60名を対象とした45分授業を5回実施しました。翌年には、弘前市とその周辺の6市町村の教育委員会と弘前大学(教育学部と医学研究科)が連携協定を結び、平川市の猿賀小学校で同じく6年生を対象に公開授業を開催し、縦断的な健康教育が普及できるよう進めています。
 最近では藤崎町・むつ市の中学校、今別町の小学校等、全部で11の小中学校で実施したほか、ベネッセコーポレーションが児童・家庭・学校をつなぐ健康教育のツールとしてホームページ「ファミリー・ヘルス・ラボ」(http://coi.hirosaki-u.ac.jp/benesse-familyhealthlab/)を開発し、黒石市の小学校で実証実験を開始しました。さらにライオンが加わり、オーラルヘルスケアの健康教育も展開する予定です。
 実際、生徒は積極的に授業で健康知識を吸収し、帰宅後に家庭で健康に関する会話が増え、保護者を含めて食事や健康を見直す機会にもなったという感想も多く寄せられています。子どもへの健康教育が県民全体の健康意識の向上へとつながることを切に願って、新しい試みに挑戦しています。




3.冬場の運動を習慣化「モールウォーキング」

 イオンは、弘前大学COI、青森県などと連携し、屋外での運動が困難になる冬場の運動不足解消を目指し、天候にかかわらずウォーキングできるイオンモール内を中心に、継続的な「モールウォーク」を推奨しています。
 参加者の意欲や健康意識を高めるため、歩数に応じた健康ポイントの付与や、定期的な健康測定会を実施。内臓脂肪の測定では花王と連携しています。健康ポイントや測定結果の記録には、イオンの電子マネー「WAON」を利用し、参加者自身が健康増進を実感でき、運動の習慣化を促進。WAONのデータを活用し、参加者の健康状態と購買活動との関係についても分析を進めています。
 モールウォークの取組みは全国のイオンにも拡大展開し、健康なまちづくりにも大いに貢献しています。




4.職場のランチで健康づくり「ヘルシー弁当」

 職域の健康増進を目的に、青森銀行など青森県内3社の従業員約100名を対象に、ヘルシー弁当プログラムを実施しました。カロリーや塩分を抑えた「スマート和食弁当」(花王が考案・監修し、弘前市の栄研が提供)を昼食として花王が食事指導を行うことにより、健康意識の向上にも配慮しました。プログラムの開始前後に参加者の血圧や内臓脂肪等を測定したところ、3ヵ月後の測定では、参加者の内臓脂肪の低下や血圧の改善効果が見られました。さらに青森銀行八戸支店でもヘルシー弁当プログラムを開始しています。
 栄研は、高血圧予防食として塩分控えめで低カロリー、食物繊維が豊富なヘルシー弁当「まめしぃ弁当」(http://www.eiken-kenko.com/mamecy/)を開発し、5,000個を販売しています。メニューや栄養についてフェイスブックで毎日情報発信しており、食生活改善指導も行う予定です。栄研は本事業によって日本商工会議所青年部主催の第13回ビジネスプランコンテストで準グランプリを受賞しました。




5.おいしい減塩を啓発「健康レシピコンテスト」

 弘前大学COIと楽天は、レシピを通じて高血圧予防に取り組む「減塩で高血圧予防!3ダウンレシピコンテスト」(https://recipe.rakuten. co.jp/category/39-705/topics/)を実施し、著名な料理研究家の浜内千波氏監修のもと、油・糖・塩を減らしてもおいしいレシピを「楽天レシピ」ユーザーとともに開発・提案しました。楽天レシピには浜内氏が開発した青森県産品を活用したお手本レシピや、中路重之特任教授による健康啓発コラムを掲載。同時にテレビで関連番組を放送したほか、弘前市で試食会を開催するなどオフラインの啓発も実施しました。
 優秀レシピ56品は書籍「食べるダイエット」にも掲載され、同書籍は全国のコンビニで発売されました。また、優秀レシピ4品を青森県内のイオンで総菜として発売しました。




6.従業員の新・多機能健康管理ソフト「健康物語」

 マルマンコンピュータサービスは、弘前大学COIと連携し、企業における従業員個人の健康管理サポートに着目。日々の生活の中で気軽に健康管理できるソフト「健康物語」を開発しました。食事や運動・血圧・体温・歩数など個人の健康データを計測・記録し、管理画面で健康状態をチェックできます。体操や健康教養についての動画なども盛り込み、健康についての知識を楽しく習得できます。集団分析機能も装備し、組織における健康意識と生産性の向上を支えています。
 本ソフトは健康教育に特化した実践的な健康増進ツールとして注目され、同社は「2015あおもりITBIZコンペティション」で最優秀賞を受賞しました。また本アプリのiOS版とアンドロイド版も公開されました。iOS版は、iOS初の健康データと健診データを管理できると注目されています。
 (マルマンコンピュータサービス、アップル調べ。平成29年3月時点)




7.育児ストレスを改善する「親子体操」プログラム

 体操のお兄さんで知られる佐藤弘道氏による、親子で実践可能な体操プログラム(親子体操)について、弘前大学院医学研究科は、親子体操の実施が参加者の健康に与える影響について調査を行いました。すると、母親の体力向上に加え、抑うつ状態や育児ストレスの改善効果がみられました。
 弘前市と弘前大学COIは親子体操の普及にむけ、指導者養成プログラムも実施し、修了した受講生を普及員として認定しました。弘前市は母子の健康づくりを目的に、弘前市内の保育園や幼稚園、公共の健康づくり施設において、普及員が親子体操を広める親子体操教室を開始します。これを弘前モデルとして全県で展開し、若い世代の健康づくりを強力に支援していきます。




8.認知症との関連示唆に期待「腸内細菌解析サービス」

 健康状態や病気のかかりやすさ、認知症や生活習慣病、肥満などと腸内細菌叢の関係が明らかになるにつれ、様々な研究が注目を集めています。また個人向けの腸内細菌叢解析サービスも増加しています。
 テクノスルガ・ラボは、腸内細菌叢解析の技術開発や企業向けのサービスにおいて十年以上の実績があります。北海道システム・サイエンスや弘前大学COIと共同で、腸内細菌叢解析や、ライフスタイルに合わせた個人向けサービスの開発を進めています。




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