ビジョン
弘前大学COIが創造する、
健康ビッグデータと最新科学がもたらす“健康長寿社会”とは?
10年後、あるべき社会や暮らしの実現に向け、今取り組むべき革新的な課題に対して産学連携で研究・実用化を目指すのが、文部科学省・科学技術振興機構(JST)が実施する研究開発支援事業「革新的イノベーション創出プログラムCOI STREAM」です。
弘前大学は平成25年に、COI全国12拠点の一つに採択され、拠点名を真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点と銘打ち、岩木健康ビッグデータを活用した認知症や生活習慣病など病気の予兆発見の開発や、予防法を開発する研究とビジネス化に取り組んでいます。これらを社会実装することで、高齢者の健康寿命延伸が可能となり、高齢者の認知症や生活習慣病を減らすことで医療費の削減もめざします。最終的にはQOL向上を実現して、健康ビッグデータと最新科学がもたらす“健康長寿社会”(下図参照)を達成します。
令和元年夏にJSTが行った中間評価では、弘前大学COIは【最高評価S+】を獲得し、全国的に大きな注目を集めています。
また政府の「令和元年度版 科学技術白書」において、第1回 日本オープンイノベーション大賞 内閣総理大臣賞」の受賞とその内容について、弘前COIが紹介されました。
背景
日本一の短命と少子高齢化という悪循環。
課題先進県 青森ならではの健康研究プラットフォーム
「岩木健康増進プロジェクト」
日本は超高齢化社会を迎え、内閣府の調査では65歳以上が総人口に占める割合が28.1%(平成30年)に達し、2035年には32.8%、2060年には38.1%に達すると予測*2されており、高齢者における健康増進および医療費の削減が社会課題となっています。
なかでも青森県は、高齢化に加え、40歳以上の加齢性疾患・生活習慣病の罹患率・死亡率が高く、県民の寿命を大きく損なっています。厚生労働省が5年ごとに行っている都道府県別平均寿命ランキングでも、青森県の平均寿命が全国最下位ということがわかっています。性別でみると、青森県の男性は1985年から、女性も2000年から平均寿命最下位の状態が続いているのです。
弘前大学では、大学院医学研究科社会医学講座 特任教授 中路重之が中心となって、短命県返上を目標に掲げ、平成17年から弘前市の岩木地区(旧・岩木町)の住民を対象に、大規模住民健康調査「岩木健康増進プロジェクト健診」(以下、岩木健診)を毎年実施しています。岩木健診では弘前大学の医学部をはじめ、全学部(教育学部・理工学部・人文社会科学部・農学生命科学部)の教員や学生、さらに自治体、住民、企業、研究機関などが運営に協力し、健康研究に関する産学官民連携の一大プラットフォームを形成しています。
岩木健診には毎年1,000名前後の住民が参加し、同地区の小中学生(小学5年生以上の各学年)約500名に対して毎年行っている調査も含めると、健診により得られる住民の健康情報(2,000-3,000項目の健康ビッグデータ)は延べ約2万人以上と膨大です。
弘前大学COIではこの研究を拠点の中心に据え、岩木健診で十数年にわたって蓄積している健康ビッグデータを活用した研究開発・ビジネス化に取り組んでいます。
拠点には、花王、ライオン、イオンリテール、エーザイ、ベネッセコーポレーション、協和発酵バイオ、カゴメ、ハウス食品グループ本社、クラシエHD、ローソン、サントリー食品インターナショナル、ファンケルなど有力企業が40社以上参画し、本学が立地する青森県・弘前市とも一体となって、強固な産学官民連携体制を構築しています。
また、サテライト拠点として、九州大学医学部と京都府立医科大学も加わり、名桜大学、和歌山県立医科大学とも連携し、充実した研究推進体制を築いて、取り組みを行っています。
(注)*2:内閣府「令和元年版高齢社会白書」より